大学入学者選抜におけるCBTの活用の推進に向けた連携協力に関する協定キックオフシンポジウム


【期日】令和6年8月21日(水)
【開催方法】Zoomウェビナーによるオンライン開催
【主催】独立行政法人大学入試センター
【共催】神田外語大学、国立大学法人佐賀大学、国立大学法人電気通信大学
【プログラム】

時間 プログラム
13:00 ~ 13:10 大学入試センター理事長挨拶
山口宏樹 独立行政法人大学入試センター 理事長
13:00 ~ 13:40 基調講演
「現代の大学入学者選抜を取り巻く課題の全体像とCBTの活用可能性 ―少子化、多面的・総合的評価、CBT―」
川嶋太津夫 大阪大学スチューデント・ライフサイクルサポートセンター長/特任教授
13:40~14:00 CBT活用連携の目的と具体的な活動内容について
寺尾尚大 独立行政法人大学入試センター研究開発部 准教授
14:00~15:00 連携大学におけるCBTの現況と課題・連携への期待
「CBT実践の7年間―成果と課題、そして展望―」
西郡大 佐賀大学アドミッションセンター長
「世界標準を満たす電気通信大学のCBT入試」
植野真臣 電気通信大学大学院情報理工学研究科 教授
「コロナ禍で実施のオンライン入試を振り返って―課題と今後への期待―」
長田厚樹 神田外語大学 事務局長補佐
15:00 ~ 15:10 休憩
15:10 ~ 16:00 指定討論・パネルディスカッション
パネリスト 西郡大・植野真臣・長田厚樹
指定討論 川嶋太津夫
司会 寺尾尚大


【講演動画】
講演動画の視聴
【質疑応答】
シンポジウム当日及びアンケートでお寄せいただいたご質問に、お答えいたします。

Q1. 電気通信大学から、大学試験場モデルの環境について、クラウド上のほうが安全とのお話しがありましたが、どのような点で大学が自ら運営するオンプレミス環境よりも安全なのでしょうか。
A1. 現在、電気通信大学では、オンプレミス環境(学内にサーバを立て、インターネットには接続しない)で複数サーバを運営管理しています。しかし、サーバをどのように構成しても故障して動作しないリスクが必ず存在します。その場合、トラブルに迅速に対応するのは難しいと考えられます。さらにサーバ導入から経年的に故障リスクは増加していきますし、受験者数が想定以上に増えた場合に負荷が大きくなって動作に影響を与えてしまうかもしれません。その意味で必要なリソースを容易に変更でき確保できるクラウドサービスはデータセンターを分散させるなどの冗長設計も行えば安全性は大きく向上できるでしょう。トラブルの際に、運営会社に迅速に対応してもらえる安心感もあります。

Q2. PCIとは何ですか。
A2. Portable Custom Interactionのことです。TAOなど QTI (Question & Test Interoperability) 規格に準拠したCBTシステムにおいて、標準の出題形式(インタラクション)にはない独自形式の試験問題の作成・受験者の解答のために、追加で搭載するモジュールです。CBTシステムの中には、新しい出題形式を導入しようとすると大規模なシステム改修が生じるものもあるのですが、QTI準拠のCBTシステムでは、PCIモジュールに関連するプログラム一式を追加するだけで、新しい出題形式の実装が可能になります。 大学入試センターのウェブページでも説明しておりますので、ご参照ください。(https://www.dnc.ac.jp/research/cbt/pci.html

Q3. IRTであれば、原則、多肢選択・1問のなかで1つのテーマ(項目)を問うことになると思いますが、その場合、現行入試のような連動問題や融合問題はどのように出題されるのでしょうか。あるいは、出題しないのでしょうか。
A3. どのような出題形式にするかは、テストの目的や仕様、測定する能力に応じて判断が異なります。 もし、基礎学力を精度よく測定するということであれば、小問集合で十分であるという判断も一定程度可能ですが、アドミッション・ポリシーに応じて問いの場面をより精緻化したいということであれば、大問や連動問題などの取扱いもIRTで不可能ではありません。実際、プログラミングの問題において、受験者が試行錯誤した際に得られるログデータを部分採点した上で、IRTで得点を算出することなども可能です。 また、測定する能力の性質によっては、こうした形式を変更することでクリティカルに影響を受けるものも受けないものもあります。 このため、目的や仕様、測定する能力を具体的に定めながら、ケースバイケースの判断が必要となり、適宜フィールドスタディを行う必要があります。出題の要否については、フィールドスタディの結果をもとに判断することになると考えられます。

Q4. 佐賀大学では試験問題の作成は全学体制とのことですが、PBTの問題作成者と同じメンバーで実施されていますか。作題負担について、同じ人に負担がかかる点を懸念しています。
A4. 佐賀大学では、PBTの個別試験問題作成者とは違うメンバーで作成しています。詳細な回答はできませんが、作成方法を工夫して、負担を減らすような仕組みを作っています。

Q5. 多くの受験者には「自分が合格できるかどうか」が最重要な点なので、CBTがより広く使われるようになると新たな「CBT対策の受験勉強」「受験指導」が広まってしまい、やはり多くの人は真のあるべき勉強とは異なる勉強に走ってしまうのでは、と懸念しておりますが、いかがでしょうか。
A5. 受験者の能力を多面的・総合的に評価・判定する観点からは、CBTだけで合否を決めるものではなく、それ以外の様々な材料を基にして最終的に判断をすることが望ましいものと考えています。

Q6. 神田外語大学で遠隔モデルの試験を実施するにあたり、試験監督など、運営上のご苦労はありますでしょうか。
A6. 受験者の端末や通信環境などが多様なため、準備や当日の対応などについては相当のエネルギーが必要でした。その半面、遠隔で行うメリットもありましたので、受験者を多面的に評価するツールとして工夫が出来ればと考えています。

Q7. 電気通信大学では、設問ごとの特性を評価して等化することなどにIRTを応用しており、受検者の回答履歴に応じて最適な問題を提示するCAT(Computer Adaptive Testing)を実装されているという意味ではないと解釈しましたが、正しかったでしょうか。
A7. ご指摘のとおり、電気通信大学で現在実施している試験はCATではありません。文部科学省委託事業の委託要件を踏まえ、国際技術標準に準拠したCBT実施システムTAOを用いて、予め構成した問題バンクから、等質で誤差がなるべく小さくなるように自動で構成されたテストが受検者ごとに提示されるようにしており、この方式はCBT運用の国際標準に準じています。CATは測定精度を落とさずに提示問題項目数を減じることができ、近年では国際標準に準拠するようにすべての受検者に等質な精度を保証するCATも研究されており、将来的に導入を検討することも視野に入ります。

Q8. 神田外語大学がコロナによりCBTを実施されたのち、今は留学生を除きCBTを実施されていない理由が気になりました。接続テスト等で事務局の手がかかったことのほかに、CBT入試を継続する上での課題や問題点があったのでしょうか。
A8. 遠隔モデルの実施については、通信環境等に依存することなど、「公平性」という観点から、平時の実施には理解を得られない事案もあり、小規模の実施にとどまっています。